近年岡本電機では、既存の段ボール製造プラント制御システム「Σ2000」の後継機「Σ3000」をリリースしました。ここではその開発にあたったエンジニアに、開発時の思い出話を語ってもらいました。これが岡本電機のスタッフが手掛ける「仕事」です!
「Σ3000」において、既存機種の性能を大きく凌駕する次世代向けの中央処理装置の開発。想定外のトラブルに根気強く対応し「稼働1年間クレームゼロ」という高信頼性を達成しました!
Σ2000 ドライエンドコントローラ幸いにして、当社が開発した段ボール用生産管理装置「Σ2000」は、その性能・機能についてお客様から非常に高い評価をいただいてきました。しかしその一方で、生産現場の質的・量的な進化は非常に目覚しく、特に処理速度に関しては十分なパフォーマンスを発揮することが難しくなってきており、お客様からも様々な改善・改良のご要望をお寄せ頂くケースも増えてきていました。
これらに逐一対応していただけでは、お客様のニーズに根本的にお応えしたとは言えません。そこで将来的な機能の向上も視野に入れ最新の技術を導入し、性能と容量を大幅に増強した新システム「Σ3000」の開発がスタートしました。
Σ3000 中央処理装置(BOXPC)「処理速度を従来機の50〜100倍に向上する」「記憶装置容量は従来機の1000倍とする」「CPUファンやハードディスク等回転部品を廃し長寿命化を図る」「周辺I/O通信のグレードアップを図る」…Σ3000のシステムを支える中央処理装置(BOXPC)には、これら具体的な数値目標が設定され、その達成を目指して設計が進められました。ここで最も重視したのは、新システムの信頼性と完成度です。その検証のために、新BOXPCの機能を再現した「仮BOXPC」を作成し、お客様のご協力もと現在稼働している既設システムと入れ替え、実機評価を行いました。
当初は新システムが処理装置や周辺I/O機器とミスマッチを起こしたり、コンパイラ等開発環境の変更によるエラーが発生したりと、多くの改善点が見つかりました。またそれらに十分な対応を行い、テスト結果を反映した量産用PCBOXを製作する段階に至っても、想定以上の内部温度の上昇などのトラブルに見舞われました。これらの対応には非常に苦労しましたが、無事新BOXPCは完成。中央処理装置以外の部分も、SSDの導入など短寿命部品を用いない新規基板の作成を進め、無事概ね事前に想定した通りの性能を発揮できる「Σ3000」の骨格が出来上がりました。
Σ3000 ドライエンドコントローラ新システム量産用「PCBOX」は現在、複数のお客様のもとに納入されています。開発陣としても、稼働現場に1年間密着してのフィールドフォローを展開しているのですが、実はこれまで「お客様からのクレームが一件も発生していない」という、この業種では非常に稀と言えるほどの実績を残しています。
現在も新たに数件のお客様への納入計画が進められているのですが、既存システムは現在、世界中でおよそ300台が稼働中。開発当初からこだわり続けた「信頼性」を武器に、今後、この「PCBOX」を搭載した「Σ3000」がその全てに導入され、お客様の求める以上の成果を発揮してくれることを期待しています。
全てのお客様にとって「使いやすい」インターフェイスを実現するために、ゼロからシステム刷新。「新しいものに取り組む」過程は技術者としても非常に面白く、またしっかり成果に繋がりました!(技術部 情報システム課 / 佐藤 仁勇)
「Σ3000」の開発にあたり、ソフトウエア上の最大のテーマはユーザ−GUIの向上にありました。具体的なテーマとして設定されたのは、システムの操作性を向上させるために「使う人ごと」に画面レイアウトや表示サイズを自由にカスタマイズできるようにすること、また複数の端末からでも操作が可能にすること、の2点。
以前の機種ではユーザーインターフェイスの表示にDelphiを用いていたのですが、求める機能を実現するために今回はDelphiではなく、Windowsベースのユーザインタフェースサブシステム、WPFの導入が決定。GUIのゼロからの完全刷新が決定しました。
技術部 電子技術課
大谷 浩之
「Σ3000」のインターフェイスに必要な画面数は、ざっと200点。その全てを作り変えていく作業は、決して楽ではありませんでした。特に開発スタート時は、WPFを扱う知識も不足していますから、一つの画面を作ってもうまく動かないこともありましたし、表示する情報量によっては画面の応答速度が極端に遅れてしまうこともありました。これに対応するため、社内のWPFに詳しいスタッフに話を聞いたり、新たなコンポーネントを評価し最適な手法を見つけ出したりと、コツコツと改善を積み重ね要求仕様を満たしていきました。
少しずつWPFを身につける中「こんなこともできるんだ」という発見があり、自分のスキルが成長していくプロセスは純粋に楽しかったですね。「向こう10年以上扱えるシステムを作る」という目標のもと、修正時の作業をできるだけ少なくするため、プログラムのモジュール化にも取り組みました。結果的にΣ3000が当初想定していた機能が実現できたことはもちろんですが、この開発を通してスタッフそれぞれが新たな経験を積み大きく成長できたことは、今回の開発にあたっての大きな成果だったと感じます。
もちろん、システムへの要求は今後も際限なくハードルが高くなっていきます。今回の開発も決してゴールではなく、途中経過に過ぎません。今後は例えばIoTやAI、またクラウドなどの新たな技術をどんどん投入して、次世代の生産管理装置の機能向上、さらなる操作性や保守性の向上を目指していきたいですね。またやや方向は異なるのですが、Σシリーズの外観デザインもさらに向上の余地があると考えています。
実用面はもちろんですが、これからは「見た目にも格好良い」システムを、自分たちの手でデザインしていければ面白いなぁ、なんて考えています。
幅広い要素技術の蓄積とともに、岡本電機の業務は段ボール製造プラント分野のみならず様々な分野へと展開を続けています。以下は、近年の主な開発を時系列で示した年表です。
1970年 昭和45年 |
・IC応用制御回路 ・パッセンジャーボーディングブリッジ制御装置 |
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1973年 昭和48年 |
・舶用リモコン装置(NK規格適合) |
1975年 昭和50年 |
・段ボール製造用スリッタスコアラ制御装置(IC応用制御回路) |
1976年 昭和51年 |
・マイクロコンピュータ制御システム |
1977年 昭和52年 |
・ブラウン管プレス成型装置 |
1981年 昭和56年 |
・段ボール製造プラント生産管理装置Σシリーズ(第一世代) |
1982年 昭和57年 |
・段ボール製函機管理装置(CNC) ・段ボール製造用スリッタスコアラ制御装置(マイコン型) |
1985年 昭和60年 |
・段ボール製造用カットオフ制御装置(マイコン型) |
1986年 昭和61年 |
・段ボール製造プラント生産管理装置Σシリーズ(第二世代) |
1988年 昭和63年 |
・段ボール製造プラント生産管理装置Σシリーズ(第三世代) |
1989年 平成1年 |
・段ボール製造プラント生産管理装置Σシリーズ(第四世代) |
1992年 平成4年 |
・平盤打抜機用抜きずれ検査装置(画像処理) |
1993年 平成5年 |
・段ボール工場総合管理システム(情報処理システム)
・シリコン単結晶引き上げ装置 |
1994年 平成6年 |
・農業用ビニールハウス自動開閉装置 |
1995年 平成7年 |
・6000トン橋梁ベントアップ制御装置 ・段ボール製造プラントシート耳合わせ装置 ・年賀はがき検査装置 |
1996年 平成8年 |
・段ボール製造プラント原紙搬入・搬出ライン制御装置 |
1997年 平成9年 |
・AGV(新聞輪転機用原紙自動搬送台車)制御装置 |
1999年 平成11年 |
・高速リモートI/Oシステム(第一世代) ・段ボール製函プラント工場管理システム(第一世代) |
2000年 平成12年 |
・段ボール製造プラント生産管理装置Σシリーズ(第五世代:Σ2000) ・段ボール製造プラント用オーダスケジューリングシステム ・鉄道車両昇降装置 ・舶用電子ガバナ制御装置 ・高速リモートI/Oシステム(第二世代) |
2001年 平成13年 |
・地下鉄プラットホームドア開閉制御装置 |
2002年 平成14年 |
・排水機場ポンプ設備 |
2003年 平成15年 |
・河川監視遠隔制御システム ・排水樋門制御装置 ・新幹線車両昇降装置 ・道路縦横断形状測定装置 |
2005年 平成17年 |
・段ボール平盤打抜機用制御装置 |
2006年 平成18年 |
・段ボール製函プラント工場管理システム(第二世代) |
2008年 平成20年 |
・段ボール製造プラント貼合シート全面検査装置(第一世代) ・段ボール製函プラント印刷検査装置(第一世代) |
2009年 平成21年 |
・段ボール平盤打抜機用自動レジスタ |
2011年 平成23年 |
・段ボール製造プラント生産管理装置Σシリーズ(第六世代) ・省電力型産業用BOX-PC |
2012年 平成24年 |
・段ボール製函プラント箱精度検査装置 |
2013年 平成25年 |
・段ボール製函プラント工場管理システム(第三世代) ・段ボール工場総合管理システム(EC版) ・高速リモートI/Oシステム(第三世代) |
2014年 平成26年 |
・段ボール製造プラント貼合シート全面検査装置(第二世代) |
2015年 平成27年 |
・段ボール製函プラント印刷検査装置(第二世代) |
2016年 平成28年 |
・段ボール製造プラント生産管理装置Σシリーズ(第七世代) ・排水機場遠隔監視システム |
2017年 平成29年 |
・段ボール製函プラント総合管理システム(第二世代) ・段ボール抜き加工検査装置 |
2019年 令和1年 |
・画像処理検査装置(第二世代) ・段ボール新型製函機ソフトウェア |
2020年 令和2年 |
・産業用フルカラーLED照明 ・生産管理装置Σシリーズ用リモートI/O(第三世代) ・段ボール抜き加工総合検査装置 |
2021年 令和3年 |
・紙器プラント総合管理システム納入予定 ・段ボール製函プラント印刷検査装置(第三世代) |
2023年 令和5年 |
・段ボール製函プラント印刷検査装置(第四世代) |